太平洋真っ只中を航海するフェリーだいとうで迎える洋上での夜明け。絶海の孤島での楽しみな一日が始まります。
うふあがり島出現
船員の皆さん夜通しの航海おつかれさまです。ここは太平洋真っ只中。明るくなったけれど360度見渡しても航行する船舶はもちろん見当たりません。
沖縄では古くから知られていた「うふあがり島」
ロシア帆船・ボロジノ号が通りがかった時には「ボロジノアイランド」
存在こそ知られていたものの、遠く離れた断崖絶壁に囲まれた島々はつい百年少し前まで人類の上陸を阻み続けてきました。
大東諸島には、
・南大東島
・北大東島
・沖大東島
とあり、まず見えてきたこちらの島は「北大東島」です。
その北大東島に対峙するように位置するのが「南大東島」
それほど波風あるわけではないのに波濤が岩に当たり砕ける様子が船の上から見て取れます。まず寄港するのは先行の「北大東島」ですが、旅犬ドギーと自分は後行の「南大東島」から訪ねます。
フェリーだいとうの運航サイクル
フェリーだいとうは「北大東島」「南大東島」どちらの島へ先に入港になるか、航海ごとに交互にローテーションする形を取っています。
1日目…那覇→▲船内泊
2日目…→北大東島→南大東島→北大東島▲
3日目…北大東島→南大東島→▲船内泊
4日目…→那覇
今航海では北大東島先行。南大東島先行の場合はこの逆になります(荷役の量や天候によってはその限りではありません)。滞在時間こそ短いものの2日目に南大東で一時下船すれば一航海で両島に上陸することが可能。今回はその計画です。
フェリーだいとうがひと月あたり運航されるのは4~5便。一航海で帰らなければ次にフェリーがやってくるのは約一週間後。天候や海況に起因する欠航も多いので正常通りに運航されたら、です。
群青色の海
個人的に一番好きな海の色。底知れぬ深さが懐の広さを感じさせると共に恐ろしくもあります。元来、自然は「畏れ敬う(おそれうやまう)」存在であると思っています。時に恐ろしく時に多大な恩恵を与えて下さる存在。この色の海を見ると改めてそのことに気づかされます。
フェリーだいとうのちょっと変わった係留方法
南北両島主たる港は島の西側に位置する 「西港」 ですが、今回はどちらも南側の港へ。潮流や風向きの関係です。
フェリーだいとうが港に接近すると一隻のボートが出てきて、船を沖にある二箇所のブイに係留します。
陸上では作業員さんがフェリーから発射されたロープを受けて、三・四箇所に係留。
島の周囲に強い海流が流れる大東諸島では岸に直接船を係留することができません。仮にそうすると岸に船体が当たって船が壊れます。
かと言って波静かな湾があるわけではありません(現在は大掛かりな工事によって漁船が発着できる掘り込み式の漁港が造成されています)。
沖に沈めてあるアンカー(錨)に船を繋いで沖に流されないように岸から船を引っ張って。それでまずフェリーだいとうを海上で静止させます。
大東島での下船方法
大東島の名物行事が始まります。
クレーンに吊られてフェリーにやってきたのは「鉄の籠」
籠は船員さんたちの手によってまず甲板に置かれます。
「籠(かご)」
と言うより、
「檻(おり)」
ですね。
船を接岸することができない大東島への上陸は、モノもヒトもクレーンで吊られて上陸します。
眼下の景色は、
フェリー→群青の海→陸地
と移り変わります。
下船の皆さんおつかれさまでした。北大東島に無事に上陸です。
見ていると一瞬の出来事ですが、揺れ動く標的(フェリー)の限られた範囲(甲板)に籠を下ろす技術。人間が乗った籠をなるべく振れることなく一直線に島へ運ぶ技術。こう言ってしまうと軽いのですが「神技」です。
フォークリフトに回収されて次の仕事に備えます。
続いて荷役作業
北大東島で乗客の下船が完了すると積荷の荷役作業が始まりました。
四人が四隅にワイヤーを引っ掛け、一人が作業の進捗状況をクレーン操縦者へ伝達。速やかに吊り上げられます。
ワイヤーが掛けられた積荷はクレーンで吊り上げられて船から島へ。
着地するとワイヤーが外されフォークリフトで一旦港の隅へ移されます。地上スタッフも船上と同じように五人一組での作業。見学していて命令系統って大事だなって感じます。
湾が無い大東諸島では船を海に浮かべておくことはできません。作業船、漁船。全ての船は陸に上げられます。
係留作業のボートは乗組員さんごとクレーンで吊られて揚陸。出港の際はこの逆です。
朝ごはんタイム
先行である北大東島での一連の作業を眺めた後、朝ごはんを食べることにしました。日常生活に置き換えると朝からアレですが、起きてからもう3時間は経過しています。お腹空いたー。
昔からフェリーだいとうのカップ麺販売機は徳島製粉の商品が提供されています。どういう販路なんでしょうね。
それにしても船の上で食べるごはんって、なんでこんなに美味しいのでしょう。何食べても美味しいです。
北大東島から南大東島への航海
先行の北大東島での一連の作業を終えてフェリーだいとうは南大東島へ向かいます。
改めてフェリーだいとうの運航サイクル
北先行…①那覇→②北大東島→②南大東島→②北大東島(係留)→③北大東島→③南大東島→④那覇
南先行…①那覇→②南大東島→②北大東島→②南大東島(係留)→③南大東島→③北大東島→④那覇
基本的に一航海4日で南北交互に運航されます。
今回は「北大東島先行」パターン。
A:北大東島をがっつり観光・宿泊。南大東島に上陸無し
B:南大東島をちょっと観光(半日弱)、北大東島に移って宿泊
C:南大東島をがっつり観光・宿泊。北大東島は上陸無し
この選択肢があります。「南大東島先行」パターンであればそれぞれ南北逆。
ここはお得感的に「B」を選んでしまいます。いつもは時間制限のある旅はあまりしないのですが今回は旅犬ドギーと訪ねるとびきり離島の旅。限られた時間でできるだけ色んな所に連れて行きたく、ちょっと欲張りなコースを計画しました。ちなみに南北どちらに重点を置きたいかと言えば今回は北大東島なので「北大東島先行」パターンで願ったり叶ったりです。
南大東島へは北大東島を出て小一時間の航海。十数kmしか離れていませんが、この間の水深は1,000mにもなるそうです。
円形な形状の南大東島の周囲はこの通り、ほぼ断崖絶壁で船が容易に近づくことができる場所はありません。
沖縄!海!
と気持ちが高揚する方がいらっしゃるかもしれませんが、この島には親切なビーチはありません。この特殊性が古来から人類の上陸を阻んできたと言えます。
南大東島に接岸
南大東島での上陸港も北大東島と同じく、島の南側にある亀池港になりました。着岸港は当日の風と波から判断して決定されます。
要塞のような荒涼とした雰囲気。南北大東島共に天然の良港なんてものはなく、ここだって元々は断崖絶壁です。岩を砕いて道を作り陸地を固めてなんとか防波堤を造成したもの。ここまでしても船を横付けすることはできません。
旅犬ドギー長い航海おつかれさま。旅の道連れにインコがいました。
地上からクレーンによってモーターボートが下ろされ、沖にあるブイにフェリーを係留する作業が行われます。
荒波の洋上に小さなボートで下りての作業。お気楽観光客である自分はその恐怖ばかり考えてしまうのですが、船員さんや島の方々にとっては日常の光景なんでしょうね。素晴らしい。
南大東島上陸
北大東島ではその作業を眺めていましたが、今度は自分たちの番。フェリーだいとうの乗客が下船するために乗る上陸籠がフォークリフトに載って登場しました。
ただ持ち上げたらいいわけではなく風などで大きく振れると非常に危険です。全ての作業に熟練の技が光ります。
フェリーだいとうに載せられます。北大東のカゴとの違いは「屋根が無い」「おさかなイラスト」というところでしょうか。
自分たちが乗って檻が閉められるとすぐさま浮上。
島とフェリーの間にある群青色の海がチラッと顔を覗かせます。
無事に南大東島に上陸しました。