おはようございます。硫黄島で迎える朝。今回の旅はドギーと一緒なのでキャンプ指定地でテント泊でした。陽が昇る前に昨日行けなかった場所へ早朝のおさんぽです。
薩摩硫黄島飛行場
集落背後の坂道を上がり丘の上に来たところ。公衆トイレがあるこの場所が交差点になっていて、
「恋人岬」
「硫黄島飛行場」
これらに分かれます。
*「あれ?硫黄島に来るには船しかないのでは??」
自分の古い記憶では枕崎飛行場から不定期のチャーター便が飛んでいて、それが廃止になってからは緊急輸送で用いられるくらいなように記憶していましたが現在は準定期便が飛んでいるようです(枕崎空港自体は不振と累積赤字により現在は廃港)。
現在は鹿児島空港を拠点とする航空会社が「鹿児島-薩摩硫黄島」の間を月曜日と水曜日の週二便運航。完全予約制で前日正午までに予約が無ければ休航。バスと言うよりは乗り合いタクシー。それの空版と言える存在のようです。
運賃は、
「島民…5,000円」
「通常…30,000円」
空から硫黄島の山と濁った海を眺めれることができるのがとっても魅力的!けれど価格設定的に観光利用をターゲットとする交通機関ではないようです。
NJA新日本航空ホームページ→https://www.newj.co.jp/
離島ブームとヤマハリゾート
そもそもなぜこのような場所に空港があるのか。硫黄島に空港を整備したのは国や鹿児島県ではなくいち企業である「ヤマハリゾート」。昭和48年(1973)9月に併設するリゾート「旅荘 足摺」の輸送のため建設されました。
店名の「足摺(あしずり)」は、
俊寛があのポーズを取った時に立っていた岩。
リゾート建設当時は円安で海外旅行は高嶺の花。ハワイ行くのに1回100万円と言われていた時代です。庶民が行くことができるリゾートアイランドは「国内離島」。特に沖縄が米国施政下にあった時代「南の島」と言えば鹿児島県の離島。ちょっとした「離島ブーム」が起きていました。
そこで建設された離島リゾートが硫黄島の「旅荘 足摺」であり、トカラ列島諏訪之瀬島(すわのせじま)にあった「旅荘吐火羅」
諏訪之瀬島にも硫黄島と同じくヤマハリゾートによって飛行場が建設されました。
※薩摩硫黄島飛行場の滑走路は就航便があるので立ち入り禁止ですが、定期便が存在しない諏訪之瀬島飛行場は滑走路に立ち入ることができました(訪問当時)
当時の高価な旅のニーズが分からないところですが、一般的に「南の島」から連想されるものは白砂にマリンブルーの海が広がる水辺。例えば「加計呂麻島(かけろまじま)」や「与論島(よろんとう)」なら分かりますが、硫黄島や諏訪之瀬島はビーチがありません。おそらくお部屋の窓から見えていたのは噴煙を上げる活火山だったことでしょう。離島マニアならそれで良いですがその人種の人々は絶海の孤島にリゾートは望まないと思うので、なぜここにそんなものを作ったのか色々謎があります。
ヤマハリゾートは近辺では屋久島にもあったようですが、それらの島々をクルーザーやチャーター機を用いての「アイランドホッピング」のような売り出し方だったようです。そのためにいち企業が絶海の孤島に飛行場まで作ってしまうのだから勢いに関しては凄さを感じます。
ちなみに「旅荘 足摺」の宿泊代金は、手元の資料によると2名1室でお一人さま30,000円くらい。
昭和45年(1970)の大卒初任給が平均37,000円くらいなので、現在の価値に換えると1泊150,000円くらいでしょうか。これにチャーター機の運賃が掛かっていました。
野良クジャクとその想い出
ヤマハリゾートの象徴と言えば飼育されていた「インドクジャク」
孔雀(くじゃく)と言えばオスが羽根を広げた姿が非常に美しく、動物園では花形動物として飼育されています。リゾートに花を添える存在としてクジャクは相応しい生物と言えます。
しかしながら外来種である以上それは管理されての事。硫黄島やかつてヤマハリゾートが経営していた沖縄県小浜島(こはまじま)では、台風時に飼育小屋が倒壊するなど管理の不備により逃げ出したものが野生化。農作物を食い荒らすわ島固有の生物などを捕食するわですっかり嫌われ者。
硫黄島は硫黄が噴き出す土壌の関係もあるのでしょうが、野菜を植えても実がなると孔雀が食べるため野菜が作れず専ら鹿児島から買ってると島民さんが言ってました。
昔小浜島に住み込みでサトウキビの収穫を手伝っていた時の頃。キビ刈り仲間が孔雀を捕まえて寮に持ち帰りました。小浜島のクジャクはヤマハリゾートはいむるぶしが持ち込んだものが脱走して野生化したものなので、はいむるぶしに持ち込むと生死関わらず一羽5,000円で買い取っていました。
はいむるぶし→https://www.haimurubushi.co.jp/
当時の賃金が日給5,000円(食住込み)。
*「これってサトウキビ刈りより、クジャク狩りした方がいいんじゃね?」
仲間内でそんな話が出たものです。ちなみにハブも5,000円で町が買い取り。アフリカマイマイは100円。これらは生け捕りの必要がありました。現在はどのような制度になっているか分かりませんが、ヤマハリゾートと聞いて孔雀を見ると、蘇るのはその時のことです。