画面上部に戻る

story

そらうみ旅犬ものがたり

今や鉄道が走らなくなった国鉄20,000kmを訪ねる<国鉄2万キロ記念碑/広島県安芸太田町>

そらうみ駅駅長であり鉄道にも造詣が深い旅犬ドギー。国鉄時代の「キリ番」を求めて、かつての線路跡を訪ねました。

国鉄2万km記念碑とドギー

 

国鉄20,000km達成記念碑

旧可部線沿いにある

明治維新以降、政府が道路より鉄道を優先する政策を進めました。現在のJR主要路線の多くは戦前に開通していますが、戦後も全国各地で鉄道建設が続けられ、その延長距離が20,000kmになったのが広島県のこの地点になります。

 

広島から浜田を目指して

82年後の20,000km達成

元々は広島(=山陽)と浜田(=山陰)を結ぶ陰陽連絡線・廣濱鉄道(ひろはまてつどう)として、広島・浜田双方から建設が進められてきた可部線(かべせん)
昭和29年(1954)3月30日、可部線布(ぬの)-加計(かけ)間の延伸開業を果たしたことで、国鉄総延長2万kmを達成。達成地点の坪野駅近くには「国鉄2万km記念碑」が立てられました。

その後も可部線の延伸工事は進められ、昭和44年(1969)には加計-三段峡が開通した。引き続き浜田を目指して工事は行われたものの、結果的に延伸することができたのは三段峡まで。昭和55年(1980)には今福線(=広浜鉄道、可部線の延長工事)自体の工事計画が中止され、三段峡駅が終着駅になりました。

 

工事凍結から部分廃止

2万kmを達成した地点は、現在は廃線

建設凍結によって一応の完成を見た可部線でしたが、だからと言って路線の維持は安泰ではありませんでした。赤字であった可部線は三段峡駅開通前から廃止勧告を受けており、幾度もその危機にあった。
近年まで生き永らえた理由として、国鉄の廃止基準が全線での収支としていた点。可部線は途中の可部駅で電化/非電化が分かれていたが、広島市街地から近い電化区間(横川-可部)はむしろ黒字。赤字区間である非電化区間(可部-三段峡)の赤字をカバーしていたため、廃止を免れていた。

全国的に見れば、ある区間では黒字なのにこの基準に従って廃止基準としたため、北海道の松前線のように廃線になった路線も存在します。

 

その後、可部線は国鉄からJR西日本に継承され、明らかに赤字である区間の収支は見過ごせなくなった。沿線地元では、近くにあった津浪駅(つなみえき)とヒット曲・TSUNAMIをかけた存続運動等も盛んに行われましたが、可部-三段峡の46.2kmは平成15年(2003)12月に廃線になりました。

廃線になった一番の理由は「乗客の減少」ですが、当地が既にマイカー社会であり列車に乗ろうと言う層が少なかった。
街へ行くにも元々広島はバスが発達しており、列車で街へ行くという概念が薄い。可部線を利用して広島駅に行ったところで、市中心部へは市内電車に乗車しなければならない。バスなら市街地の紙屋町(かみやちょう)等へ直通。所要時間は列車より早く、バスタイプによっては着座保障。

車両運用面でも可部駅で電化/非電化が分かれていることで、車両や司令所を別で用立てする必要があったため、その経費が重くのしかかっていた。かつては浜田へ向かって工事が行われているから、という理由で廃止を免れたこともあったが、今はそれは無い。電化して広島直通としたところで乗客が増える材料は乏しく、廃止は止む無しというところでした。

 

廃線区間となった国鉄20,000km達成地点

レールと20000を表す刻印

そうなると困ったのが「国鉄2万km記念碑」
2万kmを達成した地点から鉄道が消えることとなり、記念碑だけが取り残されることになった。

一時は廃線後の未整備によって記念碑は雑草に埋もれ、その存在が忘れられつつあった。
その後線路跡の一部が舗装されることになり、それに伴って記念碑が現在地に少しだけ移設された模様。

「レール」と「20000」の字は劣化、コンクリート自体に含まれる石灰成分が流れ出して、これらのモニュメントが判別し辛くなっています。

舗装された廃線跡

旧坪野駅があった方向。カーブの径と単線幅が、かつて線路があったことを想像することができます。

可部線廃止区間では、安野駅や加計駅のように駅舎と車両が保存され、公園や広場になっているところがありますが、駅舎等の多くは取り壊されバスターミナルに転用されたり、この場所のように線路跡が道路に転用されています。

 

また、一度廃線になった可部-河戸(こうど)間では、周辺の宅地化を理由に電化整備の上、

可部-河戸帆待川(こうどほまちがわ)-あき亀山
と、駅名・駅位置を変えて平成29年(2017)に復活。そんな明るいニュースもあります。

今回訪れた場所

国鉄2万キロ記念碑

日程

平成31年(2019)2月


back

前の画面に戻る

前の画面に戻る

© そらうみ旅犬ものがたり