世の中には「難読駅名」や「面白駅名」として挙げられる駅があり、昨今ではバラエティ番組などで取り上げられる機会が増えました。伊予と土佐を結ぶ「予土線(よどせん)」のこちらの駅もその一つです。
予土線
半家駅があるのは高知県四万十市。最後の清流と名高い四万十川(しまんとがわ)が市内を流れることが市名の由来ですが、平成の大合併で四万十市となる以前の自治体名は「西土佐村」。半家駅がある場所は旧西土佐村の中心からも少し離れた人家まばらな小集落です。
この辺りで「街」と言うと四万十市の中心市街地である「中村」が真っ先に思い浮かびますが、そこへは約40km離れています。対して愛媛県宇和島市の中心へは約34km。西土佐から中村への道路は所々1車線の狭路が存在しますが、西土佐から宇和島への道はほぼ片側一車線。距離・所要時間共にお隣の愛媛県のほうが近いことになります。
半家駅駅舎へは国道381号から階段を上がったところに位置します。
駅への階段の上がったところ。階段下の横断歩道がある道路が国道381号。その奥。田んぼがあって土地が一段下がりますがそこが四万十川が流れている部分。
「四万十(しまんと)」
と耳にするだけで無条件に良いものを想像してしまうところですが、一般的に登場する四万十川映像の多くはここより下流。この付近は川の中に岩が多く下流域ほど親水できる場所ではありません。
カヌー犬ドギーと四万十川を下った時の記事です。
半家から増毛へ
以前は北海道留萌本線(るもいほんせん)の終点に「増毛駅(ましけえき)」があり「増毛」「半家」と対になる存在でしたが、増毛駅を含む末端区間が平成28年(2016)12月に廃止になったためそのカテゴリーでの駅訪ねはできなくなりました。
廃止後の増毛駅は観光施設に転用されているので旧駅舎として訪ねることは可能です。
半家駅を含む区間の歴史
半家駅の開業は昭和49年(1974)3月と日本の鉄道史としては新しい。それだけに半家駅を含む区間は近代的な高架橋やトンネル・橋梁を多用することで出来るだけカーブを減らして敷設されていることが特徴。
その代わり全駅に駅員さんが配置される時代ではなくなっていたので、設置当時から無人駅規格となっている駅が多数存在します。半家駅もその一つ。
右…宇和島方面
左…窪川方面
隣の「江川崎(えかわさき)」駅は予土線を代表する駅。同時に西土佐村の中心であり、事実上の県境駅(隣の西ケ方駅までが高知県)。それでも今や無人駅です。
予土線の愛媛県側は軽便規格の宇和島鐡道に由来する古い歴史を有しています。対して吉野生(よしのぶえき)駅以東半家駅を含む高知県側の区間は戦後に建造されたもの。
前者は駅間が短く、カーブや傾斜がきつい
後者は駅間が長く、直線が多く運行速度が速い
路線の規格や性質がはっきり分かれています。
予土線の途中駅を訪ねた時の記事に予土線建設の歴史を書かせてもらっています。
18切符旅人の間で話題になるあるあるとして、予土線の上り列車は全て「窪川」行きですが終点まで行くためには「若井-窪川」間の普通運賃を支払う必要があります。これは「窪川-若井」がJRではない他社線である事、予土線が若井駅から分岐していることが理由です。世の中にはターミナル駅の一つ先から路線が分岐する例はいくつか存在しますが、予土線のケースは乗客にとって少し損失感が残ります。
予土線は反対側の発着地も一駅先から分岐なので、切符の種類によっては宇和島駅で駅の外に出ることが出来ない場合があります。詳しくは路線図を眺めて見てください。
九頭竜湖駅がある越美北線もターミナル駅の一つ隣から分岐します。
列車到達難易度
JR四国のみならず全国有数のローカル線となっている予土線。存続の見通しは厳しいものがあります。現状一日5往復の運転数と宇和島近郊の区間列車が辛うじて運転されています。
平家ゆかりの半家という地名の由来
諸説存在する中で有力なのが「平家落人」説。屋島の合戦で落ち延びた平家の武将が追手に地名等から悟られないために「平」の上部横棒を下部横棒の下に移して「半」にした。
平家
↓
半家
この説が有力とされています。
平家落人伝説が伝わる絶海の孤島を旅した時の記事です。
プラットホームの風景
半家駅は全列車が停車する一面一線の無人駅。全列車と言っても予土線には各駅停車しか運転されていません。
宇和島方向を望むプラットホーム端付近に「37.4km」のキロポスト。一般的なキロポストは起点からの距離を示すものですが、予土線の場合はキロポストは終点の「北宇和島駅」を0kmとして建てられています。これも予土線の愛媛県側の歴史の長さからくるもの。起点の「若井駅」からの距離は38.9kmです。
路線はこの先「第六四万十川橋梁」で四万十川を渡ります。
高いところに線路が敷設されていることを幸いとして、半家駅を含む江川崎駅以東の区間は予土線を走行する列車の窓から四万十川を見下ろす形で「最後の清流」と称されるその流れを楽しむことができます。またその流れを串刺しにするように線路が敷設されているので、車窓も右に左にと移り変わりを楽しむことができます。
今回は自家用車での駅訪ねになりましたが路線応援の想いを込めてドギーと乗り鉄も良さそう。青春18きっぷシーズンのような多客期を避けるとのんびり鉄道旅が楽しめるのかなあと思います。予土線沿線にはかっぱバックパッカーズさんほか、いくつも旅人向けのお宿さんがあります。