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そらうみ旅犬ものがたり

JR四国で最も短いプラットホーム<真土駅/愛媛県松野町>

佐を結ぶことから「予土線(よどせん)」。路線名に旧國名を冠しているあたり何も知らなければ広大な印象を受けますが、一両編成の列車が一日数往復走るだけのローカル線。この駅はその申し子と言える存在です。

初夏になると紫陽花に彩られる、小さな小さな無人駅

予土線

真土駅(まつちえき/愛媛県松野町)

國(いよのくに・愛媛県)の宇和島駅から佐國(とさのくに・高知県)の窪川駅を結ぶことから「予土線」。一部の区間列車を除いて「宇和島-窪川」で運転されていますが、厳密な予土線区間は「若井-北宇和島/76.3km」
※起点は高知県側の若井駅

これは宇和島・窪川いずれも一駅先から路線が分岐するためです。

宇和島-北宇和島(予土線分岐)-高光-…予讃線

窪川-若井(予土線分岐)-荷稲-…土佐くろしお鉄道中村線

駐輪場の左側にある未舗装のスロープを通って駅舎へ向かいます。

 

キロポスト

25キロポスト!

プラットホームへ向かう坂を登って初めて目に入る鉄道構造物が「キロポスト」。路線が起点からどれだけ来たのかを知らせる路線距離標です。

「25」の単位は「粁(キロメートル)」。ここでは予土線が分岐する北宇和島駅から「25km」来たことを示しています。

北宇和島駅の予土線0キロポスト

予土線は「起点:若井」「終点:北宇和島」ですが、キロポストのカウントは終点の北宇和島駅が「0キロポスト」。通常キロポストは下り方向に向かって数値が増えていくものですが、ここでは上り方向に向かってキロポストの数値が増える逆転現象が生じています。

これは昭和49年(1974)の予土線全通時に起点が若井駅(=高知県側)に変更されたけれど、キロポストはそのまま据え置かたことによる措置。路線の歴史は宇和島近郊(=愛媛県側)が圧倒的に古いのでキロポストを差し替える作業や、それまで長く用いられてきた慣例を崩すことが良策ではないと判断された。のでしょうか。

なので、

上り…若井(窪川)方面
下り…北宇和島(宇和島)方面

予土線においては「上り方向」に進むにつれキロポストの数字が減って行き、「下り方向」に進むとキロポストの数字が増える。予土線あるあるの一つ。

予土線25キロポストとドギー

キロポストはその鉄道がどれだけの距離を旅してきたのかを知らせるもの。そのロマンを感じることができる個人的に好きな鉄道構造物の一つです。まだ駅を散策していませんがキロポストがお出迎えとは、自分の中で既に好きな駅にランクインしました。

 

真土駅の位置関係と予土線建設の歴史

真土駅のプラットホームと駅舎

真土駅の大きな特徴はプラットホームにあるのですがまずは駅舎へ行きそこで情報を得る事にします。ホーム(後方)のコンクリートブロックで組まれたものが駅舎。その右側にはお手洗いがあります。

古い駅のトイレは国鉄時代の表記そのままに「LAVATORY」となっていますが、真土駅もそれ。ここではお手洗いが閉鎖されていました。現在JR四国の無人駅ではトイレの閉鎖が急ピッチで進んでいる印象があります。

一日で往復できない山間部の秘境駅

国鉄表記を見ることができる駅を訪ねた時の記事です。

予土線路線図

真土駅は予土線のちょうど中間辺りに描かれています。けれど距離は等しくなく「北宇和島-真土」はキロポストの通り25.0km。「真土-若井」は51.3kmあります。このからくりは、

「宇和島-吉野生/1923年12月」
※初代開通区間は大正3年(1914)10月の「宇和島-近永」

「吉野生-江川崎/1953年3月」

「江川崎-窪川/1974年3月」

予土線は全通までに大きく分けて宇和島鐡道時代・二期工事・三期工事に分けることができます。

隣の吉野生駅(よしのぶえき)までが宇和島鐡道によって建設された初代区間で宇和島近郊区間と言えます。この区間の特徴は従来からの集落位置に合わせて鉄道が敷設された点。駅間が短く軽便鉄道規格で建設されたことがあり急勾配・急カーブが多数存在します。あまりスピードを出すことができず距離のわりに時間がかかります。

対して吉野生駅から窪川駅までの間は県同士の広域輸送を想定して敷設されたため、必ずしも昔からの集落に沿って駅が設置されているわけではなく駅数が少ない。線形は戦後の国鉄規格で直線が多くスピードが出せます。

この事は距離と所要時間を見ると如実に表れていて、

6:04宇和島→6:59真土…8:09窪川

「宇和島-真土/26.5km」間の平均時速は約28km/h。例えるならば自転車と同じくらいの速さ。

対して「真土-窪川/55.7km」は平均時速約47km/h。両者を比べると距離は倍以上、速さが倍近く差がある事がわかります。

一日8往復。これは予土線内では多いほう

そのうち下り列車の何便かは途中の「江川崎(えかわさき)」止まり。真土駅へ訪れる際に渡る「広見川(ひろみがわ)」が四万十川に合流する地点が江川崎。一般的に四万十川の「中流-下流」は江川崎から下を指します。ドギーと下る四万十川カヌーツーリングはいつも江川崎から下流です。

カヌイスト憧れの清流・前編

ドギーと四万十川を下った時のことを書いた記事はこちらです。

多くの川が集まって一つの大きな流れになることが「四万十川(しまんとがわ)」の名称由来の一つですが、その川の中には広見川のように愛媛県から流れて来る川もあります。

県境の駅でもある真土駅

真土駅が位置する場所は愛媛/高知県境近く。お隣の西ケ方駅(にしがほうえき)は高知県四万十市です。

 

真土駅前後

近永・宇和島方面(下り)

二つ先にある「松丸駅(まつまるえき)」が松野町の中心。かつての高千穂鉄道の日之影駅(ひのかげえき)のように駅舎2Fに併設された「森の国ぽっぽ温泉」があります。

在りし日のローカル線を感じることができる列車宿

旧駅舎に温泉がある駅の記事はこちらです。

また、街中には湧水を用いて造られる地酒「野武士」の「正木正光酒造所(まさきまさみつしゅぞうしょ)」さんや、四万十川水系をテーマにした珍しい淡水魚水族館「虹の森公園おさかな館」があります。

江川崎・窪川方面(上り)

駅に来た時に目に入った「25キロポスト」。線路の先は四万十川、そして高知県の方に向かって延びています。

 

真土駅最大の個性

真土駅最大の個性は「プラットホーム」の短さ

駅の前後に線路反対側に渡ることができる場所があるのでそちらへ移動して丘の上から駅を眺めてみます。少し離れただけでこのように駅を一望。

長さは「25m」

これは学校のプールと同じ長さ。当路線で運転されている「キハ54形気動車」の場合、車両全長が約21メートル。すなわち真土駅のプラットホームは、一両編成の列車が停まることができる長さしか無いことになります。これは四国内では最も短い。予土線内ではこのような一面一線の無人駅がいくつも存在しますが、その中でも群を抜いた短さになっています。

短いプラットホームとドギー

訪れた時間は日中の列車が運転されていない時間帯。駅周辺に人影はなく静かでとても良い環境に駅がある印象を受けました。

今回訪れた場所

真土駅(まつちえき)

日程

令和元年(2019)5月


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