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2019-10-04

二段式スイッチバック駅とそこに湧く延命水<出雲坂根駅/島根県奥出雲町>


駅の標高は564m

山地が多い日本国土を、鉄道がクリアするための方法の一つに「スイッチバック」があります。この場所では島根・広島の県境付近の急峻な地形に鉄道を通すことで、周辺地域同士の行き来はもちろん両県両都市の行き来を可能にしました。

出雲坂根駅

出雲坂根駅(いずもさかねえき/島根県奥出雲町)

路線開通・駅開業は昭和12年(1937)11月20日。

八川(やかわ)-備後落合(びんごおちあい)
間の延伸に伴って開業。同区間の開通によって木次線(きすきせん)81.9kmが全通した。

同年同月同日、第一回プロ野球オールスター戦が開催されています。

 

同駅は「奥出雲おろち号」の運行において、名物でありハイライトシーンとなる重要な駅。そのことは沿線自治体が特に心得ているようで、平成22年(2010)に駅舎が新築されました。

出雲坂根駅の位置

出雲坂根駅があるのは、前述の通り木次線最後の開通区間。

県境区間で運転本数は極少

特に利用者・運転本数が少ない県境区間で、定期運転が行われているのは一日三便。その定期列車でさえ保守点検等での運休があり、日常的な鉄道利用はもはや困難になっている。

駅名標の根元に有るのはキロポスト

木次線のラインカラーで彩色された駅名標。

根元にある「63」「3」が記された棒は、起点からの路線延長を示す「キロポスト」
木次線起点の宍道駅(しんじえき)から、63.3km来たところに出雲坂根駅があります。

 

スイッチバック駅

坂とトンネルとスノーシェッド

出雲坂根駅の個性は、なんといっても「スイッチバック駅」

図の通り、県境付近の急勾配を方向転換を行うことによって勾配を緩め、難所を克服する。

いくつかトンネル・覆道(ふくどう)が描かれていますが、当地は日本有数の豪雪地帯。降雪から路線を守るスノーシェッド(=覆道)がいくつも設けられています。

この「豪雪地帯」であることが、木次線が延命した最大要因。冬期は長期間雪に閉ざされる上、「沿線道路が未整備」だったこともあり、採算の合わない赤字路線ながら廃止を免れた。
ただし絵に描かれている「奥出雲おろちループ」が平成4年(1992)に開業。冬期も比較的安定的な行き来が可能になったことで、木次線の存続理由はその後解消されている。

スイッチバック駅を示す立て札

プラットホームに出てみます。二番線背後の斜面に駅の標高や特徴。坂を登った先の三井野原駅の概要が紹介されています。

※三段式スイッチバック、二段式スイッチバック
現在は出雲坂根駅でのスイッチバックはカウントせず、登坂時の方向転換のみをスイッチバックにカウントしている様子。

 

坂を下りて来た列車が到着

下りスイッチバックを経由して出雲坂根駅に到着

上り列車が坂を下りて駅に入って来ました。

「上り列車」が「坂を下ってくる」
ややこしいのですが、前者は運用上の方向。鉄道は起点へ向かう方向が「上り」、その逆が「下り」と称します。

木次線は山陰本線の駅でもある宍道駅が起点なので、この場所は

上り列車が坂を下る
下り列車が坂を登る

になります。

出雲坂根駅に入線した列車

二番線に列車が入線しました。この時点では、進行方向ではないことを表す赤色のテールランプが点灯しています。

運転士さんが列車を安全に停止させてから反対側の運転台へ移り、再発車します。

出雲坂根駅の入退線がよく分かる図

駅舎内に分かり易い図がありました。それぞれの方向から来た列車が、どのように駅に入線して退線(発車)するのか。

 

今でこそ出雲坂根駅に入線するのは、一両の各駅停車か奥出雲おろち号だけで、駅の能力的には十分かオーバースペックなくらい。

けれど、かつて広島から松江・米子の陰陽連絡を担っていた「急行ちどり」は、増加する乗客に対処するため増結して運転されることがありました。
通常の駅であればプラットホームが無い場所に停車している車両は、ドアを開閉しない「ドアカット」で対処することができますが、行き止まりのスイッチバック形状である出雲坂根駅は、編成数が増えると列車が駅や分岐点より手前に収まり切らない。

駅の奥は行き止まり

そのため、出雲坂根駅では引き込み線を延長する改良が施されました。駅の奥へ延びる線路はその名残。そして錆びた線路から見て取れるように、引き込み線はもちろん2番線ホームの後方も、現在は殆ど使用されていません。

 

方向転換完了して発車

奥にはおろちループが見える

テールランプがヘッドランプに変わりました。発車準備完了です。

背後には木次線の命運を握る、奥出雲おろちループの道路橋が見えています。

構内踏切は二回鳴ることになります

再度踏切が鳴り、上り宍道行き列車が発車しました。

こちらの構内踏切は上り・下り共に、入退線で二度作動します。

駅の先で、坂の上り・下りに分かれているのがわかる

列車が行った後の上下分岐

左側1番線に入線した列車は、再発車すると右斜めにクロスしてその奥で坂を登る
右側2番線に入線した列車は、再発車すると左斜めにクロスしてその奥で坂を下る

 

木次線の陰陽連絡機能が失われ始めたのは、山陽新幹線が新大阪から岡山まで開通した昭和47年(1972)頃から。
山陰と山陽を連絡する路線は、岡山駅から乗り換える伯備線(はくびせん)に取って替わられ、新幹線に接続する特急が設定されるなど、利便性・所要時間において、木次線は大きく水を開けられることになりました。

鉄道ファンからすると静かなローカル線は歓迎なのですが、路線が廃止になってしまっては元も子もありません。木次線は三本の指に入る好きな路線。たまにしか来ることができませんが、訪問することで小さな小さな助けになりたいです。

 

駅横に湧く延命水

駅舎の端に湧水がある

出雲坂根駅を訪ねるもう一つの目的が湧水。

駅新築に合わせて、水汲み場も新しく整備された

「延命水」と呼ばれる湧水が、駅横に湧いています。水は数匹のタヌキに囲われる形で守られていますが、

付近に棲息する動物も愛飲の湧水

狸や狐もこの水を飲み、とても長生きな古狸(こり、ふるだぬき)も居たから…と。健康でありたいとのは、全ての人の願いです。

湧水をそらうみ夕食会に使用します

運営しているお宿の仕事で、ここに限らずしばしば湧水を汲みに行くことがあります。料理がとても美味しくなるからです。

中国山地最奥のこの場所へ来ることは、一年に一回あれば良い方ですが、ここの水はとても良い。
個人的なイメージですが、周辺に数箇所「延命水」を汲むことができる場所がありますが、やっぱりこの場所で汲む水が良いです。

観光列車「奥出雲おろち号」に乗車すると、駅での湧水の案内と、それを汲むために少し長めの停車時間が設けられていたように思います。

 

ようやく登場、駅たずねナビゲーター犬

水汲み完了を待つドギー

駅たずねナビゲーター・しょう。
実際のところ駅=公共の場なので、自由におさんぽはできません。湧水地点にしても衛生的に近づけることはできません。

そのような場所では所々で登場するのみ。
この場所で延命水を汲んでいる時はこのように繋いでいましたが、とても良い子で待っていました。後で汲んだ水を与えたら、ガツガツ飲んでいました。


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