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2020-05-07

巡礼の元祖と葉書の語源になった木<法起院/奈良県桜井市>


ドギーが暮らす四国地方には脈々と受け継がれてきた「四国八十八ヶ所」がありますが、近畿・岐阜県にはそれより更に歴史が古い「西国三十三所」があります。そのお寺まいりを発案された方を祀る寺院のお話です。

日本における巡礼の祖が祀られている地


花の御寺の門前街

長谷寺を中心として門前街が広がる。国道165号は旧伊勢街道

その場所は奈良県中部の桜井市(さくらいし)にある「長谷寺(はせでら)」の門前街。
数多くの文化財と牡丹を始め四季折々・数多くの花々に彩られるその様は「花の御寺(はなのみてら)」として、多くの方々が訪れます。宗派としては空海が開いた真言宗(しんごんしゅう)の十八本山の一つ「豊山派(ぶざんは)」の本山。今日もこの聖域で多くの僧侶が日々修行に励まれています。

 

法起院(ほっきいん/奈良県桜井市)

法起は「ほっき」と読み、発起と同じ意味・読み。何かを思い立つこと。
「一念発起(いちねんほっき)」と言う四字熟語がありますが、それの事。思い立ったことが仏の道なので、発が法の字になっています。

 

西国三十三所の始まり

開山堂(かいざんどう)に祀られている徳道上人

こちらの寺院に祀られているのが「徳道上人(とくどうしょうにん)」
長谷寺を開いた傑僧で、法起院が隠棲の地とされる。

西国三十三所開基のおはなし

「徳道上人(とくどうしょうにん)」はその生涯を終えてあの世に旅立った時、その入口で閻魔大王に会う。死後の旅路を審判する役目の閻魔大王ですが、世の中が荒れて地獄行きの審判を下すことが増えていることを嘆く。
そこで上人に三十三の法印を授け、民衆が巡礼を通じて現世で功徳を積んでからこちらの世界(=あの世)に来るよう、その指導役を任せた。
上人は現世に舞い戻り、閻魔大王のお告げ通り民衆に観音巡礼の功徳を説いて回ったが、誰も信じる者はいなかった。そこで摂津中山寺(現兵庫県宝塚市)に法印を埋め、機が訪れるのを待つこととした。

徳道上人御廟(ごびょう)

法起院には、徳道上人の御廟(ごびょう・お墓のこと)があります。

上人が宝印を中山寺に埋めてから約270年後。熊野詣(くまのもうで)を行っていた花山院(かざんいん、第65代花山天皇)の枕元に熊野権現が現れ、徳道上人が埋めた宝印の事を告げる。花山院は中山寺を訪れそれを探し出し、観世音菩薩が祀られている三十三箇所の寺院を札所に定め、近畿と岐阜県を回る巡礼を完成させた。

この巡礼が「西國(さいごく)」と冠して称されるようになったのは、江戸時代。江戸から伊勢詣(いせもうで)で訪れた後、紀伊半島東岸を南へ下り那智大社へ向かい、そこから観音巡礼を始める者が現れた。那智大社、すなわち現在の西国第1番青岸渡寺(せいがんとじ、神仏判然令ににより分離)。畿内の観音霊場を回り美濃國(現岐阜県南部)にある第33番華厳寺(けごんじ)を打ち終え、そこから中山道を経由して江戸へ戻った。観音霊場満願の御礼参りに、帰路にある長野県の善光寺に立ち寄る風習もこの時生まれたもの。
「坂東(ばんどう)」「秩父(ちちぶ)」など既存の巡礼に対して、この巡礼は江戸から見て西の国を巡る旅ということで「西國」を冠して呼ばれるようになったとの事です。

一度他界して現世に舞い戻るとは、イエス・キリストの日本版のような話。
法起院に祀られている徳道上人の時代に西国巡礼が広まることはありませんでしたが、後世まで伝わる巡礼の礎を築いたという点では、上人さまが預言者だったと言えます。

 

葉書(ハガキ)の語源

徳道上人御廟内

敷地内を見渡してみると、目に入るのがこちらの樹木。

多羅葉(タラヨウ)

通称「葉書の木」
「葉に字を書いた」ことから「はがき」

タラヨウの葉の裏を傷つけるように字を書くとその跡が残り、後から見る者へメッセージを伝えることができます。紙が普及するようになったのは明治時代のことで、それまでの記録媒体は木(木札)の方が一般的。ただしそれは墨と筆(=インクとペン)が必要なので、それもやはり庶民には一般的ではありません。
そこで身の回りにある物で字を記録することができる知恵が、こちらタラヨウの葉だったそうです。

今日タラヨウの木を見ることができるのは主に寺社。寺では経文の書き写しなどに用いられる等、重宝されました。そのため積極的に植樹が行われてきた経緯があります。
また、葉書の語源になった説から「郵便局の木」と定められており、東京中央郵便局の敷地内などにも植樹されています。

 

寺院でのドギー

法起院へは旅犬ドギーも同行

厳密には門前までの旅。いくら家族同然で旅のパートナーであるドギーと言えど、畜生である動物は寺社の境内に引き入れる事はNGです(そうではない考えの寺社も存在すると思います)。

飼主が法起院を参拝している間、ドギーは参道で待機。待機は慣れた様子で良い子で待っておりました。

底冷えする奈良盆地

訪れたこの時は、鉢の水に分厚い氷が張る冷え込みでした。

 

豊山 法起院

 

旅の期間

平成29年1月


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