駅長でもあるドギーとの旅の目的の一つに「駅たずね」があります。犬の列車旅はハードルが非常に高いので多くの場合は自家用車での訪問ですが、今回訪れたこちらの駅は列車利用では一日で行き帰りできない秘境駅でした。
JR九州屈指の秘境駅
人のような名前の宗太郎(そうたろう)駅は、住所こそ大分県佐伯市(おおいたけんさいきし)ですが市街地からは遠く離れた山中に位置します。
地域の中心駅である、
佐伯(大分)・660円
延岡(宮崎)・570円
なので「街へ行く」なら延岡の方が近い。
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宗太郎駅に存在する数少ない駅施設のこちら。
国鉄フォントの字体に旧英訳表示。古く改装されていない駅へ行くと同様の表記を見ることができますが、これで事足りていることを示す証拠。時が止まっています。
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宗太郎駅が秘境である点はいくつか挙げることができますが、その中で最大の秘境ポイントは「運転本数」
上り大分方面は早朝と夜の二便。下り宮崎方面に至っては早朝の一便しかありません。
AM6時台の終電なわけですよ。
数年前まで三往復くらいあったと記憶しておりましたが、昨今のJR九州の経営難を受けてもう末期的なところまで列車が減便されています。
延岡行き6:54の列車は佐伯6:18発
佐伯行き6:39の列車は南延岡6:06発
それぞれ佐伯か延岡の宿に泊まった上で、朝早く起きて駅に来てやっと乗車することができるレベル。大分県南部は山がちで人口が少ない上にただでさえ乗客が減る県境区間。公立高校だと越県通学には制限があるでしょうから、地方交通では重要な利用客である高校生の利用を望むことができません。私立校は学区の制限はなく延岡には甲子園に出場するような私立の高等学校がありますが、このダイヤでは通学することはできません。
かつてのJR九州のエース車両。今は代表列車は特急にちりん
一日1.5往復の列車しか走らないのかと言えばそうではなく列車に乗っての通過は容易。凡そ一時間に上下一本ずつ特急列車が宗太郎駅を通過します。この時も遠くから列車の音が聞こえて来たと思ったら下り特急列車がやってきました。
JR九州が誇る787系電車。
元々は「つばめ」「リレーつばめ」「有明」など、九州の屋台骨である鹿児島本線を走る特急で運用されていた車両。九州新幹線開通により「特急リレーつばめ」が廃止になり浮いた787系は、古い車両で運転されていた宮崎県の特急列車を中心に旧車両と置き換えられ、現在に至ります。
「にちりん」=日輪
陽光がたっぷり降り注ぐ宮崎県にピッタリなネーミングの特急列車。現787系電車に置き換えられる前は赤一色に塗装された国鉄型特急車両で運用されていたので、よりビジュアルと列車名が合っていた気がします。
静寂の宗太郎駅探検
列車が走っていない時こそ秘境駅の真髄。閑けさ一人占めです。
木や苔、レールの匂い。それに併せてこの日は雨が降った後だったので、雨上がりの何とも言えない匂いと空気感を味わうことができました。
跨線橋を登って宗太郎駅を俯瞰(ふかん)してみることにします。
さきほど特急にちりん(787系電車)がきた方向。
この辺り日豊本線(にっぽうほんせん)は基本的に単線。乗客が殆ど居ないのにプラットホームが二線ある理由は列車交換のため。特急にちりんは上下ともおおむね一時間に一本運転されているので、小一時間ここに居るとにちりんの運転停車(扉は開かない)や上下線が行き違う風景を見ることができます。
宮崎県へ向かって延びる二線のレールは駅の南側で再び単線へ戻ります。宗太郎駅は、駅と言うより機能と役割的には信号所と言った方が正しい。
宗太郎さんの聖地巡礼
跨線橋を渡って2番線へ移動。数少ない駅施設である待合所を覗いて見ます。
名前
ロケーション
希少性
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個性はたくさん。お名前が「宗太郎」さんの駅訪問もあるようです。
ちなみに宗太郎駅の一つお隣、大分寄りにある駅の名前は「重岡(しげおか)」駅。
重岡
宗太郎
姓名どちらかだけ、もしくは両方。そのようなお名前の方が全国にいらっしゃるのではないでしょうか。
秘境駅・宗太郎の将来
列車本数的に人間だって列車到達が非常に困難。今回は自家用車で宗太郎駅を訪れましたが、駅のすぐ近くに国道10号が通っているので駅自体の訪問は容易。東九州自動車道が全通したため、国道10号の県境付近の交通量は少なくなっています。その高速道路の開通(しかも区間によっては無料)に代表される道路網の充実が、日豊本線の運命を握っているとも言えます。
日豊本線は九州を南北に縦貫する基幹路線の一つなので廃止になることはほぼほぼ無いと思いますが、何年にも亘って乗降客が居ない駅はJR北海道のように廃止される可能性があります。
次にもしここへ来ることがあった時。宗太郎駅は存続しているのかな。そう感じさせる閑けさがこの場所にはありました。