まるで白亜紀にタイムスリップしたような岩の割れ目にシダ植物。地球の裂け目を地上で見れる場所が南大東島にあります。
バリバリ岩へ
その場所は南大東島北部。新しく造成された南大東漁港の近くにあります。
地面が割れて岩がバリバリ引き裂かれたような場所、すなわち「バリバリ岩」です。
十数年前のバリバリ岩の思い出
変わりました。17年前に訪れた際は紹介されている本が無ければ道も無い。事前に南大東島の事を調べようとしてもSNSはありませんし、インターネットで南大東島のことは殆ど出てこなかった気がします。そもそも前回の長期滞在でこの場所へ来ることができたのは、仲良くなった島民さんに有無を言わさず連れて来られたから。その時手に渡されたのが、
鋸(ノコギリ)と鎌(カマ)
「…なんですかこれ」
「…何するんですか」
*「この奥に地球の裂け目があるんだ」
*「草がだいぶ伸びてきたから一緒に切ってくれ」
何も知らされず連れられて刃物渡されて。今考えると相当猟奇的なシチュエーションであるように思います。
島だからこその安心感ゆえですがそれも過ぎ去りし良い思い出。もはや顔と名前が思い出せなかったのですがあのオジサン元気してるかな。今回はそれ以来のバリバリ岩への訪問。今度はカマやノコギリは必要なさそうです!
バリバリ岩遊歩道
定期的に清掃が行われているのでしょうか。足元はとてもきれいで歩き易い。尖った岩や枝が張っているので必ず靴を履いて散策を行いましょう。小生クロックス履きは失敗でした。
旅犬ドギーもバリバリ岩に繰り出します。ここは外の舗装路と異なり地面が熱いということはありませんが、尖った岩やトゲのある植物が繁茂しています。靴を履いていないドギーを自由に歩かせるのは心配だらけ。飼い主は過保護なんです。
この大地が裂けたのはいつの事でしょう。少なくとも10年そこそこじゃない事はわかりますが、裂けた時は「バリバリ」と音がしたのでしょうか。そこは「ゴゴゴ…」かな。どちらにしろ地球規格の大きなパワーが作用したことは間違いありません。
言うなればここは「ジャングル」のロケーションですが、南大東島には危険動物は生息していないとされるので、そこは昼間なら安心です。
入るには色々と恐ろしいのですが覗いて見てすぐ先に出口がわかったのでくぐることにします。十数年前の人跡未踏のバリバリ岩時代では、これは記憶にありません。
トンネルを抜けると、そこは白亜紀のようだった
入口に近いところもジャングル感は十分ありましたが、先ほどの岩屋のトンネルを抜けると「白亜紀感」は更に増します。深部に進むにつれ周りの壁が高くなり、背高な裸子植物でさえ地上に顔を出すことができていません。
大東諸島は日本国内では珍しくフィリピン海プレート上に陸地があります。国内で他には伊豆諸島、小笠原諸島など。本州では静岡県の伊豆半島の一部のみフィリピン海プレートに乗っかってます。
日本列島の殆どの陸地は大陸と同じユーラシアプレート上にあります。そこに大東諸島が乗っかっているフィリピン海プレートが沈み込み、歪みが大きくなるとユーラシアプレートがそのパワーに耐え切れなくなり、フィリピン海プレートを弾く。その時放出されるパワーが大地の揺れ。すなわち地震が発生するメカニズムです。近い将来発生するであろう南海地震もこの運動(=プレートテクトニクス)によって起こると考えられています。
改めて日本列島付近のプレート界を見ていると、紀伊半島沖は前述の二プレートに合わせて北アメリカプレートを合わせた三プレートの境界。更に東京湾付近はその三プレートに加えて太平洋プレートも加わった四プレートがひしめき合う、地球のプレート過密地帯。地震や火山が多いわけです。
大東諸島はフィリピン海プレートに乗って現在も1年で約7cmずつ北東に移動しています。すなわちユーラシアプレートに入り込もう入り込もうとしていて、そのパワーこそがこちらの岩をバリバリ引き裂いた張本人。地球のパワーを目の当たりにする機会と言えば、火山噴火や地震など。実はあまり目の当たりにする機会はありませんし、どちらかと言えばそれは災害と言う不幸な出来事に繋がります。それでいくとこの場所は良いところ。平和に地球のメカニズムを観察することができます。
バリバリ岩最深部
壁はどんどん高くなり再び上部が覆われたトンネルが出現します。今度は穴の向こうに明かりが見えないのでここから先はガイドさん同行で、ヘルメット装着の案件。素人だけでこれ以上進むのは断念します。
一生ものの思い出が出来た南大東島の旅になりました。
南大東島を離れる時
後半やや駆け足で回った南大東島。行動時間は実質5時間くらいだったでしょうか。レンタカーで回ったけれど時間が全然足りません。
1日目…那覇→▲船内泊
2日目…→北大東島→南大東島(※今ここ)→北大東島▲
3日目…北大東島→南大東島→▲船内泊
4日目…→那覇
この一航海の中で欲張って南大東島を入れたものだから、まあ忙しいです。
理想を言えばどちらの島も丸二日欲しいところ。それは飛行機を利用すると簡単です。「南大東島-北大東島」の日本一の短距離航路を楽しむことも可能。
でも旅人的には夜行フェリーで夜明けとともに大東諸島に到着!というストーリーは捨て難い。行きはまだやりようがあります。フェリーの出港日に合わせてお休みを調整して那覇に来れば無駄が無い。基本的にフェリーだいとうが出港するのは午後なので、午前の一番早い飛行機で那覇空港に到着すれば間に合います。そこでもしフェリーが欠航してもまだ飛行機に切り替える手もある。
反面、帰りはフェリーが欠航して帰れなくなったら色々と困ります。そこは少々高くつきますがある程度動きが読める(=就航率が高い)飛行機が適しています。フェリーだけで両島を楽しもうとすると、どちらかの島が今回のように駆け足になるのと、二航海時間取ったとしても等しく時間を取ることができるわけではないので理想的ではありません。経験上、一航海パスして滞在しても天気が良ければ問題ありませんが、雨が降ると本当にやる事がなくなります。
次の旅先は北大東島へ
クレーンの横に下ろされたドラム缶が並べられています。そう、この船は危険物積載便でした。
荒海のそれも落ちたら底知れぬような群青の海で、小舟による作業。フェリーだいとうの船員さん・グラウンドスタッフさん。クレーン作業。携わるすべての人たちが熟練の技揃いです。
まず北大東島で積荷を下ろして続いて南大東島で全ての積荷を揚陸。デッキはもぬけの殻です。
おつかれさまでした。明日もまた会いましょう。
短い時間での南大東島でしたが、南大東島グルメに十数年ぶりのバリバリ岩再訪。そして短足犬サミット達成。盛りだくさんでした。
次また来れるかな。場所が場所だけにまた来る自信が無いけれど、いつまでも個性あふれる島のままであられますように。