海でも山でもどこにだって行く旅犬ドギー。今回は自身の生まれ故郷が誇る山であり、西日本最高峰・標高1,982mの石鎚山(いしづちさん)頂上を目指します。
土小屋ルートから頂上を目指す
いくつかある石鎚山登山ルートのうち、今回は「土小屋ルート」を歩いて上がります。石鎚山の裏側にある元有料道路「石鎚スカイライン」上部の終点に位置するのが土小屋エリア。東から通じている「瓶ヶ森林道(かめがもりりんどう)」の終点でもあります。
遥拝(ようはい)
とは、遠く離れた場所から神仏を拝む事。例えば鳥取県の三徳山投入堂(みとくさんなげいれどう)では、山の上にある奥の院行くことができない方のために、ふもとに遥拝所が設けられています。
石鎚山もお山自体がご神体とされる神のお山。そこ(=頂上)まで行くことができない方のために遥拝所が設けられています。
いくつかある登山ルートのうち、主流となるのは
「成就社(じょうじゅしゃ)」「土小屋(つちごや)」
の二ルート。特に西条からの成就社ルートは正参道とされ、大祭時など神輿(みこし)が通過するのはそちらのルートになります。
土小屋ルートの良さは距離の短さと高低差の小ささ。土小屋遥拝殿で標高が1,500mあり、標高1,982mの石鎚山山頂へのup幅は最も小さい。
他には「面河渓(おもごけい)」「二ノ森(にのもり)」
面河渓は谷間をひたすら上がるルートで距離が長い。けれど紅葉時期(※山地なので平地より早い)には四国では随一と名高い渓谷の紅葉美を眺めながら山登りを楽しむことができます。
二ノ森から来る道は石鎚山系縦走ルート。石鎚山登山は中間地点という健脚向けルートです。
登山犬と言えどドギーは畜生なので神社境内に入ることはできません。車道を経由してこの場所に来ました。土小屋ルートを歩いて登山開始です。
土小屋ルートは成就社ルートと合流するまでこちらのような緩やかな上り坂が続きます。階段と言えば階段でつらいですが、そこは登山。つらくてしんどいのが登山です。道はとても整備されていて歩き易い。
階段と言うことは篭屋さんの出番です。何度かお山に行くうちにこのスタイルが定着してきました。
登山道が平坦なわけありませんし、階段・梯子・岩場色々あります。人間は靴を履いているので苦になりませんが素足の犬にとっては杉の葉でさえチクチクして危険です。
飼主の想いとしては山を歩く事より山の上からの景色を見てもらうことが優先事項なので、そこに連れて行くのが自分の使命となりました。
振り返ると歩いてきた登山道が見える。標高の部分で森林限界を越えつつあるのかクマザサ等低木が目立ちます。
土小屋まで犬を連れて自家用車で来ることができるお気楽登山と言えばそうなのですが、この部分だけ切り取ってみると立派な山の縦走路を歩いています。
成就社からの登山道と合流
木製の鳥居が現れました。
この地点で西条方面からの「成就社(じょうじゅしゃ)登山道」と合流します。
「成就社」「土小屋」
二ルート出合いの地点ゆえここから参詣者・登山者・下山者が増えます。近年こちらの場所に公衆トイレ兼避難小屋が整備されました。
石鎚山に限らずお山では基本的に清掃が行き届いたお手洗いは期待しない方がよいです。こちらのような施設は稀。末永く存続することができるよう主旨を理解して使用するようにしましょう。
頂上は間近
頂上付近が急峻な石鎚山には鎖場が存在します。
試しの鎖
一の鎖
二の鎖
三の鎖
土小屋から登山すると鎖が初めて登場するのは、こちら二の鎖。全ての鎖場を経由するためには正参道である成就社から登らなければなりません。
石鎚山はお山自体がご神体でありその参道は修行の場。「お鎖」を神聖なものとして修行に励まれている方々がいらっしゃいます。決してアドベンチャー気分で鎖場を通過しないようにしましょう。
急峻な鎖場は全ての方々が行くことができるわけではありません。ご安心ください、全ての鎖場には迂回路があります。
ドギーはもちろん鎖を通過することができないので全て迂回路経由・篭屋利用です。
二ルートが合流した登山道(鎖場迂回路)を進んで行くと、紅葉した樹木が目に入るようになりました。お山の面が変わったので太陽の当たり方が違うゆえでしょうか。四国随一と称される石鎚山の紅葉。高所ゆえ平地より早い9月中旬~下旬が平年の見頃となります。
この場所から延びる三の鎖を上がれば直接頂上社へ行くことができます。ドギーと篭屋はここももちろん迂回路を利用します。
石鎚神社頂上山荘
近いようで遠く感じられるのがお山登り。こちら頂上山荘が見えてくると間もなく山頂です。ゴールが見えると元気が出るのもお山登りです。
いわゆる「山小屋」
1Fが売店、2Fが宿泊施設。この隣にある石鎚神社頂上社を司る神職さんたちの滞在所も兼ねています。WCや売店は宿泊しなくても利用することができますが、前者はチップ制。後者はこちらで購入したもので出たゴミであっても各自持ち帰りです。
目まぐるしく変わる頂上の風景
今回は頂上山荘に宿泊するので束の間の「お山暮らし」を堪能することにします。
一般的な登山のタイムテーブルとして遅くとも14時15時に宿地に到着することが望ましい。逆に朝は2時3時に起きて出るとしても、決して遅くはありません(山小屋の朝食時間等によってはその限りではありません)。
宿泊と同時に仏事・神事を行うことを「参籠(さんろう)」または「お籠り(おこもり)」と言います。現在では主に寺社の宿泊施設に泊まること指しますが、それでいくとこちらの頂上山荘は石鎚神社の宿坊。夕方の神事・早朝の神事が執り行われ参籠者が列席することが可能です。
雄大な山の景色はもちろん、そのお山(=神さま)へ向かって奏上する祝詞(のりと)とお経はまたとない経験。到着時はガスがかかって眺望ゼロでしたが、僅かな間で夕陽が顔を出すまでガスが取れました。
ただそれも恒久的ではありません。晴れたと思ったらまたすぐに次の雲がやってきます。お山では特に一時・一瞬を大切にしましょう。
頂上山荘前から松山方面を眺めたところ。分厚い雲の下が道後平野。四国最大の都市・松山市が広がっています。
頂上で夕陽を見てから下山を行うと下山途中に真っ暗。危険です。
この風景を見ることができるのは頂上山荘に宿泊する者のみ。最大でも山小屋の収容人員ということになるのでとても静か。選ばれし者のみが見ることが出来るプレミアム風景です。
これは、観光客で賑わう離島でも同じことが言えます。広島県の厳島(宮島さん)や沖縄県の竹富島。日中は数分・十数分おきに連絡船が就航している島でどちらも多数の観光客が島を訪れます。が、夕方の最終便が行きその日の運行を終えた島に居るのは住民かその島の宿泊施設に泊まる人だけ。離島本来の姿に戻ります。
お山にしても離島にしても多くの人たちが日帰りで訪れる場所への宿泊。お勧めです。
そして日没
太陽が沈む日没時間。薄い雲が掛かったり掛からなかったり。この日はその繰り返しです。
分厚い雲に覆われているのが今回の登山口である土小屋がある方向。東西に延びる四国山地は雲にとっても越えるのは一苦労のようです。
すっかり雲上の人。朝起きた時に景色がどうなっているか楽しみです。
石鎚山から見る夜景
すっかり暗くなりました。見えているのは石鎚山の北側に広がる街の夜景
右…新居浜市
中央やや右…旧西条市
中央やや左の暗い部分…旧小松町
左…旧東予市
現在は市町村合併によってここで見えている部分の多くが西条市になりましたが、こうして見ると人口に応じて明るさが異なることと街の広がりと言いましょうか、かつての市町村の境界がよく分かります。
平成の大合併の機運が高まったのが平成12年(2000)頃。その前の昭和の大合併は昭和28年(1953)頃から。日本が大きく発展した高度経済成長期を挟んで実に半世紀もの期間、かつての市町村区分に親しんできました。それはもちろん街づくりにも及びます。市町村単位で開発が行われたことが街の夜景を通じて計り知ることができます。
右下のほう。一点だけ山に光があるのを見ることができますが、この場所が成就社。石鎚神社成就社とその門前にある旅館の灯りです。
夕方の日没時の北や西の空は分厚い雲で覆われていましたが、すっかり晴れています。
全体的に明るいのは月の光があるため。普段街で暮らしていると月の灯りを感じることはできても、それが周囲を照らすほど明るい光を放っていることには気付くことはできません。
風は殆どないか時折そよ風が吹く程度。けれど薄雲が天狗岳に当たり分散して西へ流れて行くということは、無風ではないようです。
奥に見える光は高知市の灯り。石鎚山は四国が南北最も狭まった部分にあるので、このように天気が良い時は北側の瀬戸内海だけでなく南側の太平洋も眺めることができます。
頂上山荘から光が漏れます。間もなく発電機が停まり周囲は真っ暗になります。そうなると星空観測には絶好の場所になるのですが、この日は満月で月灯りが眩しい夜。無理をせず明日に備えて休むことにします。
ちなみに石鎚山頂上山荘はペット禁止。この時は軒先を借りて持参した移動ゲージに防寒・防水対策を施して一夜を過ごさせて頂きましたが、元来神域である石鎚山へ畜生でもあるペットの入山はあまり望ましくないとの事でした。
ドギーにとっては今回が最初で最後の石鎚登山になるかもしれません。明朝夜が明けてから記念写真をたくさん撮ることにします。