画面上部に戻る

story

そらうみ旅犬ものがたり

青い海に美しい曲線を描く鉄道橋<惣郷川橋りょう/山口県阿武町>

青い海に曲線を描く鉄道橋。無骨な資材であるはずのコンクリートがここでは海に映えます。

日本海側ながらこの辺りの海は暖流の影響で青い海を見ることができる

 

青い海に美しい曲線を描く鉄道橋

名称:惣郷川橋りょう
所在地:山口県阿武町
所属路線:山陰本線(JR西日本)
竣工年:昭和7年(1932)
全長:189m

昭和6年(1931)5月着工、昭和7年(1932)8月竣工。翌年の昭和8年(1933)2月に同区間の鉄道開通によって京都ー幡生(はたぶ)673.8kmが全通。今日日本一長い鉄道路線となった山陰本線は同橋の完成によって誕生しました(2002年以前は東北本線739.2km)。

 

建設の経緯と実績

戦前の鉄道橋梁は鋼材を用いたいわゆる「鉄橋」が多いのですが、惣郷川橋りょうに関してはコンクリートで架けられています。鉄筋コンクリートの技術自体は我が国にも明治30年代(西暦1900年前後)にもたらされていましたが、同橋が架けられた時代は海外を含めまだ研究途上の新資材の扱い。橋に用いられる資材としては煉瓦や鋼材に実績がありました。しかしながらこの場所は日本海に面し絶えず潮風が吹き付ける、特に鉄材にとって非常に厳しい条件。同じ山陰本線に明治45年(1912)3月に開通していた餘部橋りょう(あまるべきょうりょう)が、潮風による腐食等により早々に入念な保守点検が強いられていたことがあり、比較検討の結果大型建造物としては当時は世界的にも実績に乏しかったコンクリート橋での架橋が採用されることになりました。

架橋から程なくして日本は大きな戦争に突入。鉄材不足に直面します。同時期に敷設工事が行われた路線においてはコンクリート橋が多用されました。惣郷川橋りょうでコンクリート橋が実用化された実績が無ければ鉄道を開通することができなかったか、外国に先に技術を確立されていたか。少なくとも国土の発展は今より遅かったと思われます。

平成13年(2001)には土木学会選奨土木遺産の認定を受けています。

 

夕日の名スポット

惣郷川橋りょうのハイライトシーンは夕方。西に面する日本海に夕日が沈む様子と鉄道が山口県有数の夕陽スポットになっています。かつて数多の優等列車が通過した惣郷川橋りょうですが、現在はそれら全てが運転されなくなり短編成の各駅停車だけの運転になっており、シャッターチャンスは限られます。

 

関連記事

人知れず佇むコンクリートアーチ橋<第二領地橋りょう/高知県須崎市>

同時期に架けられたコンクリート鉄道橋。潮風が吹き付ける海沿いで耐食性に優れるコンクリートが採用された点が惣郷川橋梁と同じです。

今回訪れた場所

惣郷川橋りょう(そうごうがわきょうりょう)

日程

令和3年(2021)12月


back

前の画面に戻る

前の画面に戻る

© そらうみ旅犬ものがたり