100円の収入を得るために23,687円必要という、存廃の岐路に立たされている路線が中国地方にあります。
一日三往復だけ列車がやってくるローカル駅
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その路線は芸備線・備後落合~東城。過疎化による人口減少や周辺道路の整備等により利用者がいなくなり、一日3往復という現在の姿になってしまいました。
こちら備後八幡(びんごやわた)駅は上記の区間にある駅の一つですが、平成23年(2011)頃から利用者0人という日々が続いているようです。
100円の収入を得るために23,687円という数字がいかに大きなものか。
1年間の運輸収入…約100万円
1日あたりの運賃収入…約2,740円
1便あたりの運賃収入…約450円
2,740円の収入のために列車を走らせて、車両・駅・線路等を維持していくのは不可能です。
備後落合-東城の25.8kmと似た距離で、かつて日本一の赤字路線として有名になった北海道の美幸線(美深-仁宇布/21.2km)という路線がありますが、営業係数ワースト1位を記録した昭和58年(1983)で4,780円。場所が違えば時代も異なりますが、現在の芸備線と比較すると旧美幸線の赤字額が小さく見えてしまいます。
別の数字で見てみると、国鉄末期に実施された赤字線廃止の基準の一つに旅客輸送密度が4,000人/日未満というものがあります。それでいくと芸備線の同区間は20人/日。旧美幸線で旅客輸送密度最少を記録した1984年度が24人/日なので、もはや存続しているのが奇跡なのが芸備線です。
もっともこの「100円の収入を得るために23,687円」「1日あたり20人」は芸備線全体ではなく備後落合-東城/25.8kmのものなので、芸備線全体が廃止になることはありません。芸備線は広島市近郊の都市輸送も担っているので、路線全体や赤字額自体が芸備線より大きな路線は他にあります。国鉄が行った赤字線整理でもその事情があって廃止を免れた経緯があります。しかしながら現在は可部-三段峡が部分廃止になった可部線のように、赤字が大きい区間だけが廃止になる例があるので、芸備線の全線維持は予断を許さないものになっていると言えます。
可部線廃止区間を訪れたときの記事
開業以来の木造駅舎
備後八幡駅には路線開業の前年に建てられた木造駅舎があります。駅舎の梁に建物財産標(ここでは建物資産標の名称)を発見しました。
近年では維持管理費等の軽減を目的として簡素な停留所型の待合所に建て替えられることが多いのですが、こちらにそのような動きはなく開業以来の駅舎の運用が続けられております。駅舎の簡素化工事が行われるところは向こう何十年か営業が見込めるところでしょうから、こちらの駅に関しては当区間が存続した上で駅舎が火災等に遭わない限りはこのままなのかなと感じました。
すっかり貴重な機会になった列車の発着
<上り・東城方面>
7:20 15:20 20:48
<下り・備後落合方面>
5:56 13:46 19:08
日中で光が十分ある中で列車を眺めるとなれば、チャンスは事実上上り下りの1往復しかありません。列車到達難易度はかなり高いですが、それよりも列車を下りて次また乗車するとなると、駅周辺に何かがあるわけではないので何して過ごそうか。そちらのほうが難易度が高そうです。
ドギーの備後八幡駅訪問
近くを通りがかった時に列車の発着の時間と合うことが分かり、急遽訪れました。国道314号から分岐してこの場所に来ることができるのですが、道を間違えて行ったり来たりしたため、列車に対して余裕の到着ではなくなり少し焦りました。
ドギーは備後八幡駅を含む当区間に乗車したことがあります。