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そらうみ旅犬ものがたり

かつての雲上の楽園と呼ばれた東洋一の硫黄鉱山<松尾鉱山跡/岩手県八幡平市>

この場所はかつて「雲上の楽園」と称された空間。今は山中に破棄されたかつてのコンクリートマンションが佇んでいます。

国立公園八幡平の岩手県側の登り口に佇むかつての鉱山跡

 

かつての雲上の楽園と呼ばれた東洋一の硫黄鉱山

岩手県北西部。秋田県にまたがるエリアに八幡平と言う名の山があります。八幡平は「はちまんたい」と読む。日本百名山の一つであり標高は1,614 m。

煙突があるところはボイラー室でしょうか。銭湯だったかもしれません。奥の山は岩手山(2,038m)

その岩手県側にこちらの廃墟マンションが存在しますが、こちらは元々鉱山労働者の住宅として建てられたもの。八幡平では硫黄が採れることがことが古くから知られていて、火薬の原料等になることから戦前戦後時期を中心に全国各地で盛んに採掘が行われました。

こちら松尾鉱山では労働者を確保するため福利厚生に注力していたと言われ、団地にはセントラルヒーティングや水洗トイレが完備。小中学校や病院、娯楽として映画館や時には芸能人を招いてコンサートが行われるなど、鉱山団地としてはもちろん全国的に見ても高水準の生活が営まれていました。
鉱山としても一時期日本の硫黄生産の30%を占めるなど東洋一の産出量を誇ったことが記録されています。

 

松尾鉱山閉山から今

土壌汚染の問題等があり、この区画の団地は解体されず手つかずのまま

しかしながら高度経済成長期辺りを境に硫黄を生産する工程の変化や安価な輸入鉱石の台頭により鉱山の収支は悪化。昭和44年(1969)に運営会社が倒産して全従業員は解雇され、最盛期には家族を含め15,000人が暮らしていた松尾鉱山から人の営みが消滅しました。

その後廃坑となった坑道から流出する排水が毒性が強いヒ素を含む強い酸性水であることが判明。排水をそのまま流すと北上川を通じて岩手県から宮城県、海へ出ると黒潮に乗って広範囲に鉱毒水が拡散される恐れがあるため、岩手県によって排水中和施設が建設されました。同様の施設としては日本最大級のもので24時間体制で鉱毒水の処理が行われています。現在も鉱毒が解消されていない点は、googleeathで航空写真を見ると旧鉱山付近の土壌が赤っぽい色に見えることから分かります。

鉱毒水の中和処理費用は年間5億円以上という膨大な費用を要しており、これからも半永久的にその費用が発生するため岩手県の財政面に大きな影を落としています。

今回訪れた場所

松尾鉱山跡(まつおこうざんあと)

日程

令和4年(2022)5月


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