最後の清流と名高い高知県西部の名川「四万十川(しまんとがわ)」。春になると川沿い至る所で桜が咲き乱れますが、その中で規模が大きい桜の群落を見ることができる場所が中流に位置する家地川公園(いえじがわこうえん)です。
四万十川の桜スポットとダム
多くの方々が自家用車で訪れる場所ですがすぐ近くにJR予土線・家地川駅があり、便数は少ないものの公共交通機関で訪れることができる四万十川沿いのお花見スポットにもなっています。
四万十川の紹介で「本流にダムがなく…」と紹介される文言がありますが、そちらは正解であり少し事情が異なる部分でもあります。実際に家地川公園にはこちらの建造物が存在します。
四万十川にダムが無いと言われる理由
こちら家地川ダムの堰の高さは15m未満のため法令による区分は後者。家地川ダムは通称で正式名称は「佐賀堰堤(さがえんてい)」と呼びます。すなわちダムではないというからくりです。
国力増強の産物と代償
家地川ダムの竣工は昭和12年(1937)。同年7月、日中戦争が勃発します。そんな戦時体制においてエネルギー確保は命題でありここでは四万十川の豊富な水を用いた水力発電が計画されます。
四万十川が流れる窪川は台地の上にあり、ダムの正式名称になっている佐賀とは隣同士ではあるけれど200m前後の高低差があります。台地の上を流れている窪川の水(=四万十川)を台地下の佐賀へ人工的に流すことによって発生する水力でタービンを回して発電という仕組みです。
この場所は高知県の中でも遠方のエリアになりますが、県都の高知市でかろうじて公共電力の供給が行われていた時代に、窪川や周辺の町村では電気の恩恵を受けることができていたそうです。
しかしながら事実上ダムの存在によって四万十川の水は抜かれ、渇水期には川が干上がり苔が死滅することによってそれを餌とする鮎が減少。もしくは家地川より上流に遡上することができなくなり、川の生態系が大きく変わってしまった点は否めません。
けれど四万十川の凄いところは河川名に「万」「十」と付いているように、数多の河川が流入することによって大河として回復します。一般的に四万十川を紹介する写真などは家地川ダムより下流のもの。「最後の清流」には復活するストーリーも含められています。
家地川ダムへ花見に訪れたドギー
四万十川と発電所の関係は川を旅するドギーと飼主にとって非常に残念ですが、戦前のコンクリート建造物と桜が美しい点では素晴らしい場所です。