かつて山陽山陰を結節点として賑わった場所が、時代の流れと共に無人駅化され使われなくなった鉄道施設の多くが残されたままになっている駅が広島県の山中にあります。

かつての栄華を現代に伝える日本一の秘境ターミナル駅
備後落合駅が位置しているのは中国山地山間部。駅自体は広島県にありますが、島根県・鳥取県との県境が近く岡山県もそれほど離れていません。

すなわち中国地方版フォー・コーナーズ的な場所にあるのが備後落合駅で、そのメリットを生かして山陽と山陰を結節する交通の要衝としてかつて駅周辺は大いに賑わいました。

今でこそ駅近くに商店は無く民家はまばらという感じですが、広島・松江の両都市間を結ぶ急行ちどりが運転されていた時代は鉄道職員とその家族を含めると200人あまりの人々が暮らす社宅があったそうです(蒸気機関車時代。ディーゼルカーになると鉄道職員さんは減少したもののターミナルとしては機能していた)。
また夜遅い時間に到着した乗客が一夜を過ごすために利用する宿泊施設が駅周辺に数件あったそうです。そこへは小説・砂の器の作者で有名な松本清張氏が滞在して、木次線の駅名が登場するエピソードを執筆したと言われます(所説あります)。
営業係数ワースト日本一

山奥とは思えない賑わいの空間が存在した備後落合駅周辺ですが、高速道路網の整備等により年々鉄道輸送の比重が低下。現在発着している列車は1日3~5本。特に新見・岡山方面の、
備後落合-東城
の区間は100円の収入を得るために23,687円投じているという日本一の赤字路線。
年間の収入にすると100万円しかなく1日あたりだと約2,740円。同区間を乗り通した場合の運賃が510円なので1日平均10人くらいの利用者数でしょうか。
国鉄時代に全国の赤字路線が廃止されていった際の基準は100円の収入を得るために4,000円未満の路線が廃止されていったので、時代背景が異なるとは言え同じ備後落合駅を発着する木次線共々存続していくためにはかなり厳しい情勢と言えます。

現在のダイヤでは午後のタイミングのみ三方向(三次、宍道、新見)からの列車が一堂に会しますが、訪問したこの時は木次線が積雪により運休(例年、冬期は運休の措置が取られる)。芸備線は運行されていたので双方向からやって来る列車の発着を見ることができました。
芸備線に乗車するドギー

3往復しかない備後落合-東城間の列車のうち明るい日中に走行する列車は14:37→15:25のみ。鉄道旅の楽しみの一つに車窓があるので、それを満喫しようと思うとこの便一択になります。
青春18切符シーズンになると大勢の方が訪れてペット連れは遠慮しなければならないところですが、このとき他の乗客は観光客と思しき男性が1名だけ。芸備線本当に危機的です。
無くなると残念→と言っても日常的に乗車できないし多額の寄付ができるわけでもない。せめて私とドギーが乗車することで芸備線を応援したいなあと思い、旅行プランを立てました。春になり木次線が運転再開したらまた乗りに備後落合駅を訪れたいです。
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以前、夏に備後落合駅を訪れた時の記事です。