列車を降りて駅を出る。目の前に流れている何の変哲もない小川が日本海・太平洋どちらにも流れていく。信じがたいお話ですがそんな場所があります。

日本海と太平洋の境目にある駅
世の中には分水嶺(ぶんすいれい)という場所があります。その地点を境目として両者が全く別の場所へ向かう始まりの場所。
主には河川におけるその分かれ目を指しますが、日本の本州においてはその水が日本海に流れるか太平洋(瀬戸内海含む)に流れるかが分かれる場所になります。

分水嶺は山の稜線がそれになる場合が一般的でなかなか容易に行くことができない場所が多いのですが、山形県にあるこちらの分水嶺はJR線の駅前にあり公共交通機関で訪れることができ、駅名は他ではない「堺田(さかいだ)」と付けられています。
駅を出て分水嶺へ行くと小川がありそこの水辺に笹などの葉を浮かべると、ある場所からは右へ。ある場所からは左へと流れていきます。東へ流れる水は北上川を通じて太平洋へ。西へ流れる水は最上川となり日本海へ。ここでの分かれは全く違う場所へ向かう点にロマンがあります。
訪問時は積雪期で小川自体が雪で埋まっていたので小川はもちろん分水嶺がどこにあるのかさえ分かりません。笹舟の旅をご覧なられたい方は無雪期に訪れるのが良いです。

堺田駅は山形/宮城の県境に近く、鉄道で宮城県に入ってすぐのところにはこけしで有名な鳴子温泉があります。
堺田駅から徒歩圏内にある文化財「旧有路家住宅(きゅうありじけじゅうたく)」は、松尾芭蕉らが仙台藩領から出羽國へ向かう途中で梅雨時の雨に遭い2泊3日留まったと言われる場所。ここで詠んだ「蚤虱 馬に尿する 枕もと」の句が知られています。
芭蕉はこの場所の事を「封人の家(ほうじんのいえ)」と呼んでいますが、封人とは國境を守る役人の事であると記しています。
ドギーと堺田駅の分水嶺に来たけれど

ご覧の通り駅前を流れる小川はすっかり雪に覆われていて、水が東西へ流れる様子を見せてあげることができませんでした。しかしながら四国育ちのドギーにとってこれだけの雪の上に立つことは唯一無二の経験です。