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そらうみ旅犬ものがたり

夜の風景が美しい無人駅<南由布駅/大分県由布市>

ドギーとの旅の目的の一つに駅訪ねがあります。大抵は分岐駅や終着駅がその対象になるのですが、こちらはその存在を全く知らず灯りに惹かれて訪れました。

奥の空がやや明るく見えるのは、山の向こうに別府・大分の市街地があるため

 

南由布駅

南由布駅(みなみゆふえき/大分県由布市)

無人駅なので基本的には列車の発着時間以外はあまり人がいないことと思います。特に日没後は。

事前情報なく訪れたので駅の歴史や周辺の名所を全く知らないのですが、↑この写真だけを見ればわざわざ車を停めて見ることはなかったと思います。

南由布駅周辺路線図

大正14年(1925)7月…開業
昭和9年(1934)11月…久大線全通

路線名は留米から分を結ぶことによります。それぞれの写真だけ見るとローカル線のようですが名称にある通り本線格を持つ路線です。

久大本線を地図で見ると由布院の周辺で路線がループを描いていることが分かります。久大と言うのであれば由布院へ迂回することなく直線的に大分を目指せば距離が短くて良いのですが、鉄道は由布院に乗り入れています。

明治初期の鉄道黎明期は鉄道が来ると「機関車から火の粉が飛んで家が火事になる」「煤煙で洗濯物が干せない」「騒音」のような理由で、街に鉄道が乗り入れることが大変忌み嫌われました。四国の各県庁所在地でも市中心部に中心駅があるのは徳島くらい。地方としてもパッと思いつくところでは尾鷲(おわせ、三重県)や萩(はぎ、山口県)が市街地を避けるように線路が敷設されています。

実は犬のおさんぽ向きな古道歩き<馬越峠/三重県尾鷲市・紀北町>

記事の中に尾鷲市街地を避けるよう敷設されている鉄道を俯瞰した写真があります。

 

全ての都市が鉄道反対運動によって市街地に線路を敷設させなかったわけではなく、地形上の都合や郊外に線路を通したほうが地代が安かったのような理由もあるのでしょうが、一般的にはまだ見ぬものに不信感を抱いた住人の反対運動によって市街地を避けて線路が敷設されている街が多い。それでいくと由布院は敢えて街に鉄道を誘致したように見えます。

今日、由布院は一大観光地として魅力的な温泉やホテルが立ち並び、「特急ゆふいんの森」に代表される観光列車が走る人気路線に成り得ました。鉄道を街に引き入れた由布院に先見の明があった。のでしょうか。真相を知るために市史が見たくなりますね。

 

街灯の光が美しい駅

山の上からも見える駅構内街灯の輝き

この時は自家用車で旅をしていたのですが、当初は南由布駅を訪れる予定はありませんでした。大分自動車道の湯布院インターから山を下って来る時にこの街灯の光が目に入ったのです。もう暗い時間だったのと特に土地勘があるわけではないので、あそこなんかあるのかな?と近くまで来た時にそれが南由布駅構内の街灯だと知りました。

なんでもないLED灯なのでしょうか、色や明るさにただならぬものを感じて来てしまった感じです。これが昼光色や青色、もっと暗かったりすれば駅に来ることはあったのかなと思います。

プラットホーム下にペイントされた文字の意味やいかに

2番線にもなかなかしっかりとした待合所が設けられています。

左よし←→右よし

とあります。南由布駅の昔の姿を知らないのでこれは自分の想像ですが、かつてこの位置にプラットホームの渡り口があったのではないでしょうか。横断歩道と同じく右見て左見て渡りましょう、と。

現代では跨線橋が設置されていてそれを登って下りて反対側のホームへ移動する場合が多いです。それかことでんのように平面駅が多い路線では、列車が行き来する時は構内踏切で遮断されるのが一般的。危ないですもんね。特に南由布駅のように無人駅で特急列車が高速で通過するとなると、乗客がこの方式でプラットホームを行き来するのは危険です。またバリアフリーに対応していないとも言えるので、作り替える時はこの方式はNGでしょうね。

とは言え地方へ行くとその方式の渡り口はまだまだ現役です。パッと思いつくところでは四国では日和佐駅(ひわさえき/徳島県美波町)。中国地方では備後落合駅(びんごおちあいえき/広島県庄原市)がそうだったように記憶しております。この部分が旧渡り口と決まったわけではありませんが、かつての鉄道施設を示すペイントと現代の車両に合わせてプラットホームが増床されているのを見れただけで、この駅がすっかりお気に入りです。

かつての繁栄を留める山間のローカル駅

備後落合駅を訪れた時の記憶。数年前に書かせてもらった記事ですが、その当時から渡り口に反応していました。

 

2番線

2番線へは構内踏切を通じて渡ります

現在の南由布駅の渡り口がどうなっているかと言うと駅構内の端、由布院駅寄りに構内踏切が設けられておりました。あまりのひとけの無さにちゃんと作動するのか疑わしくもありますが、この後で各駅停車がやってきてその時に遮断機・警報機の動作確認ができました。

右にあるのはキロポスト。こちらも大好物です。「1/2 102」とありますがこちらは「102.5km」の距離を示すもの。それがどこからかと言えば起点の久留米駅からになります。

0km…久留米


73.2km…豊後森

99.1km…由布院
102.5km…南由布


141.5km…大分

かつての扇形機関庫に残された機銃掃射痕

豊後森駅近くの扇型機関庫をドギーと訪ねた時の記事です。

列車が来ない時間なのを確認してから構内踏切上で写真を一枚

ここが駅の端っこなので駅の全景を見ることができるわけですが、長いプラットホームを備えていることが分かります。近くに大きな工場や旧軍用地があったような感じではないので、これが当駅が所属する久大本線が誇る本線格というものでしょうか。

2番線にやってきました

正直なところこちらから眺める駅構内はあまり感動がありません。なぜでしょう。この角度には街灯も少ない気がします。

敢えて言うと1番線にあった(であろう)渡り口跡を確認することができました。白い部分が後年コンクリートで埋められたのではないかと思います。

 

列車到着

無人駅散策はあっと言う間に時間が過ぎて行きます

この時刻表を目にした時の一般的な感じ方としては「1時間に1本」「少なっ」のような感想かと思います。そろそろ列車が来る時間になったので、線路近くからの引き上げと列車を撮る準備に移るために1番線に戻って来ました。

由布院方面の列車がやってきました

開通当初は蒸気機関車が引っ張る列車が往来していたのでしょうが、今の主役はディーゼルカー。車両の事はあまりよく分からないのですが、やっぱりJR九州の車両はかっこいいです。

 

ドギーの南由布駅訪問

今は暗くて分からないけれど、春には沿線に花が咲き乱れる素敵な駅のようです

列車が行ったあと次の列車まで少し時間があったのでドギーを連れてきました。かっこよく撮ろうにも彼は動くので、暗い中せめて撮れたのがこちらの写真です。

予備知識無く訪れた南由布駅でしたが旅を終えてからこの場所を調べてみると、駅周辺には桜や菜の花が植わっている事と由布院駅方向へ延びる線路の先に由布岳が鎮座しているのを知りました。春にこの場所を訪れてとはなかなかいかないでしょうが、今度は昼間にこの駅を訪れて双耳峰の由布岳と列車の行き来を眺めたくなりました。

今回訪れた場所

南由布駅(みなみゆふえき)

日程

令和3年(2021)12月


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