「日本一海から近い駅」と称される鉄道駅が四国愛媛にあります。近年インスタの聖地として認知され大勢の方々が訪れるこちらの駅は、どのような場所なのでしょうか。ブーム以前にうちの旅犬ドギーと訪ねた時のお話です。
日本一海から近い駅
場所は愛媛県の県都・松山市から約30km南下した地点。自家用車で訪問する場合は国道378号を旧道方面へ分岐します。
列車で目指す場合は松山や伊予大洲・八幡浜行きなど。それぞれ直通列車があります。しかしながら便数が少ないので前日に乗る列車を調べてから休むようにしましょう(=翌日の行動予定を立ててから寝る)。
加えてこの辺りのJR路線は新線/旧線があり、同じ行き先、例えば「八幡浜行き」となっていても経由地が異なる場合があります。下灘駅へは旧線の「長浜経由」を利用しなければ到達することができません。詳しくは鉄道知識が豊富なご友人にお尋ねください。
昭和10年(1935)6月、予讃本線・伊予上灘駅が一駅延伸した際に開業。同年同月、鉄道省で女性車掌第一号が誕生しています。同年10月には早くも伊予長浜駅まで延伸開業しているので、下灘駅は少しの期間だけ終着駅だったことになります。
乗客と沿線住民の理想的な関係
下灘駅があるこの区間は「愛ある伊予灘線」の愛称が設定されていて、観光列車「伊予灘ものがたり」が走っています。
伊予灘ものがたり公式サイト→https://iyonadamonogatari.com/
「列車に手を振ろう」
伊予灘ものがたりが運転されている沿線区間で積極的に行われている乗客への手振り運動。当地に来てくれた乗客さんへ感謝を表す、何よりのおもてなし。存続危ういローカル線にとっては乗車してもらうことが最大限の助けになります。乗客にとってはおもてなしを受けることができて、沿線住民にとっては鉄路存続の力になる。素敵なwin-winの形がここにあります。
下灘駅を一躍有名にしたポスター
下灘駅を有名にしたのは青春18切符のポスター。過去3回の登場は全国のJR駅で最多回数です。
当初の謳い文句は「海に一番近い駅」
このことに旅人たちが呼応する形で下灘駅の存在が知れ渡りました。現在は線路と海との間に拡幅された国道が通っているので、必ずしも海が一番近いというわけではありません。と、そんなことはいいです。潮騒の音に行き交う車の音が混じるようになっただけで、ロケーションは変わりません。
瀬戸内海を望むロケーション
駅舎を通り抜けプラットホームに繰り出します。駅下の道路が見えない角度においては今でも「海に近い駅」は変わりません。
元祖「海に一番近い駅」
他に類を見ない開放感は健在です。
下灘駅ノスタルジーを助長するものとして、
電柱巻きの駅名標。昔国鉄の行先表示で用いられていた「国鉄フォント」でしょうか。現存しているものが少なく貴重な品です。
駅のプラットホームから、瀬戸内海に浮かぶいくつかの島が見えます。
松山沖の忽那諸島(くつなしょとう)と呼ばれる島々や周防大島こと山口県の屋代島(やしろじま)。面白いところでは、バラエティ番組に登場する「ダッシュ島(=由利島)」が見えていたりします。
駅名標とドギー。今は大勢の方々が様々な目的で下灘駅へ訪れるのでこうはいきません。
列車が入線
上り・松山方面行きの列車がやってきました。
当区間はご覧の通り線路上に架線が設置されていない非電化路線。電気を受けて動力を発生させる電車ではなく、燃料を燃焼することで動力を発生させる気動車(きどうしゃ)で運行されています。動力源としてはトラック等と同じ。
絶対性能において気動車は電車より劣りますが、架線を張らなくて済むことにより風景がすっきりする。エンジンの音や排気の匂い、トコトコ走る情景など、ローカル線としての風情は非電化路線の方が良いです。
国鉄キハ54形気動車が入線。水色のラインは伝統的な四国カラーです。
JR化を控え四国や北海道に導入された国鉄の置き土産車両。当時は老朽化車両の置き換えのために製造されましたが、それも導入から30年を超えました。香川県の高徳線や徳島県の牟岐線では順次高性能な新型気動車が導入されていることを考えると、車両の置き換えが待たれます。
流行りのSNSスポット
近年下灘駅はインスタグラム等のSNS好スポットとして、訪問者が急激に増えたようです。久しぶりに駅に降り立ってみたら、
平日・曇り・日中
にも関わらず、大勢の人々が駅にいました。
休日・晴れ・夕方
であれば、夕陽を求めての訪問者が加わります。
列車や駅は、本来鉄道利用者のためのもの。そのことを留意して旅を楽しむようにしましょう。